ハッスルおばあちゃんのアルゼンチン日記


by ruriwada

瑠璃通信25

 友人2人とレティロのオムニブスターミナルで落ち合って、4人でラプラタ行きのバスに乗る。ラプラタまでラピド(急行)で一人6ペソ(約240円)。レティロから20分毎に出ているバスは快適で、約2時間後ラプラタのターミナルに到着。最後部座席の若者二人は終点でもぐっすり眠ったまま。他の乗客が起こしてやっていた。
 この国のバスは終点でも中を点検したりせず、そのまま復路の乗客を乗せて出発するから、眠り込むと元に戻ってしまう。
さて、バスの外に出たら、寒いこと。ブエノスアイレスでバスに乗るまではさほど寒くなかったのに。ラプラタはブエノスアイレス州の州都で、ブエノスアイレス市の南東56kmの所にある古都だ。モレノ広場を中心に左右対称に広がる道路の名前は全部数字である。分かりやすいと言えば分かりやすいが、何とも味気ない。もしかしたら住民は全部ロボットだったりして・・・SFの読みすぎ?。
瑠璃通信25_f0135018_2162246.jpg

                 ラプラタ市庁舎
 この町の外れにある自然公園で私達のグループの一人K氏が働いている。タクシーに「自然公園」へと頼むと、知らないと言う。4人分の乏しいスペイン語をフル活用して何とか方向だけは通じたらしく、タクシーは走り出した。
 あっという間に町を抜けると周りはど田舎。タクシーは無人の駅前で車を停め、ここからは歩いて行けと、下ろされてしまった。何とまあ商売気のないおっさんだこと。それとも外国人をあちこち引っ張りまわして稼ぐ悪質タクシーと思われたくなかったのか・・・・
あるいは、怪しげなアジア人4人組に変な場所へ連れて行かれ(?)、売上金を強奪されるとでも思ったのかも・・・案外これが正解だったりして。
 途方にくれて見回すと近くに一軒だけ店があった。ここでは件の公園を知っていて、2キロ先とのこと。歩き始めてしばらくして、まてよ・・・
「アルゼンチンで道に迷ったら最低3人に聞きなさい。知らなくても知ってる振りをして教えるから」と、來亜前に在日アルゼンチン人から注意を受けたのだが、確かにその通りだ。
 一人だけに聞いてその通りに歩き、方向違いで何度泣かされたことか。警官でさえもそうだ。この公園の中を通って行けば近道だよと教えられて行ったら、行き止まり。引き返してその警官に告げると「え?行き止まり?知らなかった」と、にこにこ。
アルゼンチン人は実に親切なのだが、実にいいかげんなのだ。
 この時も嫌な予感がして、K氏にケータイで電話すると、案の定、「とんでもない、7キロぐらいある。タクシーに乗った方が良い」とのこと。タクシーをつかまえようとしたが、いくら待っても1台も通らない。あきらめてしばらくブラブラ行くと、レミス(ハイヤー)の事務所があったのでほっとした。
 乗ってみればなるほどかなり遠いし、公園の入り口から管理事務所までが又かなりある。途中、道の片側に200人程の人や車の列がある。ピケかと一瞬緊張したが、どうやら選挙の候補者の宣伝だったようだ。こんな田舎で見る人もいないだろうに。
瑠璃通信25_f0135018_218882.jpg

         ラプラタ自然公園内の管理事務所
公園は全くと言って良いほどの自然公園でその広いこと。200ヘクタールあるそうだ。管理事務所の人達は家庭的で皆感じが良い。Kさんが公園内を案内して下さった。
事務所の屋根にフクロウが止まっていたが、そのフクロウの巣が、草むらの中にぽっかり開いた穴の中だと聞いてびっくり。鳥が地下に巣を作るとは!このフクロウ、どうもハリーポッターに出てくる豆フクロウらしいが、k氏も確信はないとのこと。
瑠璃通信25_f0135018_2194177.jpg

              フクロウの巣穴
野生のインコ(明るいグリーン)が木に枯れ枝を重ねて巨大な巣を作り、集団で生活している。出入り口が数ヶ所あり、まさにインコのアパート。それを鴨の群れが時々襲うそうだ。別にインコを食べる訳でなく、どうして攻撃するのかは分からないらしい。
瑠璃通信25_f0135018_221257.jpg
瑠璃通信25_f0135018_2213563.jpg

     上はインコのアパート、下はその剥製
公園には実に様々の小動物や鳥がいる。木の上に大きな泥で固めた壷みたいな巣を作っている鳥もいる。フクロウも数種、猛禽類やウサギ、ウサギくらいの大きなネズミもいる。
植物も様々。「ラシャかき」と言う植物はラシャを毛羽立たせるのに使っていたからだそうだ。日本から寄贈された桜、梅、楓もあった。紅梅がきれいな花をつけていた。皆で鼻を近づけ、いっせいに「あ、日本の香りがする!」
瑠璃通信25_f0135018_223194.jpg

       ラシャかき草
 2時間ほど寒さに震えながら公園内を歩き回ったが、四六時中1匹のドーベルマンがk氏に甘えながらまとわりついて回るのが微笑ましかった。他にも2匹の犬がいて、他の犬達がk氏のそばに寄って来ると、たちまちうなり声を上げて追っ払う。ドーベルマンはオスなのだが、どうやらK氏を自分のものだと思ってるらしい。
 もうすぐ任期を終えて日本に帰られるK氏。さぞこのワンちゃんとの別れが辛いだろう。12時ごろレミスで、セントロにある科学博物館へ向かう。建物には博物館とは書いてなく、大學とあったので間違えたかと思ったが、この博物館は大學の一部なのだそうだ。
最初一人12ペソと言われたが、夫が「4人で団体割引はないの?」とふざけて言ったら、そばにいた人が「アルゼンチンにいつ来たの?」と聞く。
「数カ月前」と答えると、「住んでるなら割引があるはず」と言う。係りにアルゼンチン発行の証明書を見せると、4ペソだとのこと。
 博物館には恐竜の化石が一杯あって迫力満点。他にも国中の動物、昆虫などの剥製や鉱物なども完備していて素晴らしいが、予算がないのか暖房がなく震えながら見た。まさに骨まで凍る寒さ・・・なあんちゃって。展示物もかなり埃がたまったりくすんでいたりで、手入れが行き届いていないようだ。もったいなあとつくづく思う。
 この後、K氏お勧めのパンケケ(クレープ)専門店でK夫妻と待ち合わせ。店は人気があるらしく、順番待ち。クレープと言うとデザートと思っていたのだが、ここのは中にチーズや生ハム、野菜などが入った軽食だ。
 K氏が頼んだブルーチーズ入りのを少し食べさせてもらったら、美味しかった。病み付きになりそうな味だ。K夫妻は共にワイン通で、飲んだワインの名前と値段、味、香りなど全て書き留めておられる。その夫妻が選んだワインはさすがに美味しく、皆でハウスワインを3本空ける。
 食事の後はほろ酔いカゲンで町を散策。古都だけあって石造りの古い豪壮な建物が多い。カテドラルに入ったが、ここはステンドグラスで有名だそうで、見事なステンドグラスで囲まれた内部は実に美しく神秘的だ。
瑠璃通信25_f0135018_2245044.jpg

 帰りは別会社のバスに乗ったが、こちらはラピドで4.6ペソと格安。トイレもついた快適なバスだ。夫は毎日チョーオンボロバスで一時間通勤してるが、3.5ペソもかかる。
「どうしてだ。この国は一体どうなってるんだ」と夫は一人で憤慨している。
ブエノスアイレスに着くと、ラプラタでの寒さがウソのような気温だ。人口密度が高い上、車の排気ガスがモウモウときてるから、炭酸ガスの影響で温度が2~3度高いのだろう。
by ruriwada | 2007-10-13 02:27 | Comments(0)