ハッスルおばあちゃんのアルゼンチン日記


by ruriwada

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瑠璃通信11

「ガウチョ祭り」とやらにバスツアーで行って来た。ガウチョとはアルゼンチンのカウボーイ、と言ったらアルゼンチン人に怒られるかもしれない。アルゼンチンの誇る文化であり、アイデンティティの一つでもあるからだ。
元々は農牧場の日雇い労働者をはじめとする社会の底辺に生きる人を指していたのだが、19世紀初頭からの独立戦争や革命、数々の内乱などで活躍し、近代国家の設立に大いに貢献したそうだ。
誠実で勇敢。主食は牛肉とマテ茶。自ら孤独を求めて馬と共にパンパを放浪する姿はロマンをかきたてる。
フォルクローレ(民謡で、タンゴと並ぶ文化の一つ)はガウチョ達が仲間に出会うと、
自分の人生や人から聞いた話をギターで弾き語りしたのが始まりと言われている。この詩歌、パジャーダで女性を口説いたと言う。
 因みにアルゼンチン男性は実にまめに女性に声をかけてくる。私のような60才過ぎのオバチャンでも、道を歩いていると通りかかった車の中から、あるいは工事中のおっさんたちから声をかけられる事がしばしば。
 別にイヤラシイ事を言うわけではなく(と言っても、言葉は分からないので勝手に判断してるのだが)、笑顔で陽気に挨拶されると悪い気はしない。
 さて、そのガウチョ祭りだが、祭りというから日時が決まってるのかと思っていたら、毎日やってるんだって。要するに観光客向けのショーってこと。
数台のバスでブエノスアイレスのホテルを回って集めて来た観光客を、サンマルチン広場で行き先別に乗り換えさせ、ツアーが出発。可愛い日系のガイドさんが、機関銃のような早口でスペイン語と英語で説明した後、私たち夫婦に「わかったか?」と心配そうに聞く。
「わからない」と言うと、すまなそうに「日本語が話せなくてごめんなさい」と、ゆっくり説明しなおしてくれる。ブエノスアイレスからバスで1時間半の所にある牧場「サンタ・スサーナ」に到着。大草原の中に立ち木が茂り、オレンジ色の長い壁で囲まれた門を入ると、広い駐車場に大型観光バスが沢山停まっていた。
ゲートの所で飲み物と、熱々のアルゼンチン名物エムパニャーダを渡される。これまでレストランで食べたエンパニャーダはあまり美味しくなかったけど、ここのはとても美味しかった。やはり揚げたてだからだろう。
中に入ると、屋根は茅葺のような、床は土間の、木造の簡素な建物の中に、数百人は座れる数の長テーブルや椅子が並べられている。建物の外では4メートルほどの真っ赤に燃える炉があって、その上の鉄網の上にはニワトリや豚肉、牛肉の大きな塊、チョリソー(巨大ソーセージ)などが隙間なく並べられ、ジュージュー煙を上げている。
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思わずヨダレが垂れそうになったけど、ガイドさんが焼きあがるまで馬に乗るか馬車に乗ってこいと言うので、夫と私は馬に乗ることにした。以前ラクダに乗ってその高さに怖い思いをしたことがあるから、出来るだけ小さ目の、温和そうな(そう見えた)のを選んで乗せてもらった。
全員が乗ると柵を開けて一斉に出発するんだけど、それを待っている間に私の乗った馬は勝手に群れを離れ、囲いのすみで草を食べ始めてしまった。
こちらは文字通り手も足も出ないから、馬が下を向くのにつられて振り落とされないように、必死で手綱を握り締めていた。
そのうち囲いの外の草を食べようとしてロープ越しに首を伸ばすから、ロープが手の甲をこすって痛い。
「そっちのは美味しくないから戻って!」と叫んでも馬の耳に念仏。
あまりの痛さに悲鳴を上げたらしい。ガウチョがあわてて駆け寄って馬の首を元に戻し、言葉が通じないと思ったのか、私にゼスチャで手綱をこう言う風に引っ張れと示してから、皆の所まで馬を連れて行ってくれた。
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 柵が開かれガウチョの乗った馬が先頭で歩き出すと、約30頭の馬達が自然に黙々と歩き出す。10才位の女の子が私のより大きな馬に平然と乗ってるのには感心した。馬達はけして隣の馬とぶつからず、後になったり先になったりしながらゆっくり歩いて行く。よほど訓練が行き届いていて、しかも従順な馬だけ選んであるのだろう。
 短い距離とは言え、大草原を風に吹かれながら馬に乗っているのは気持ちが良い。その風で私のひも付きの帽子が飛ばされてしまった。
「あー、ぼうしが!」と日本語で叫ぶと、先ほどのガウチョが「またきみか」と言う感じで苦笑いしながら、またまたゼスチュアで「自分が拾うから先に行け」と合図する。
30分ほど乗馬を楽しんで囲いに戻って馬を下りたら、さっきのガウチョが帽子を手渡してくれた。
 その後お待ちかねのアサダ料理。ツアーバス毎に名前の書かれたテーブルに着席。夫婦がテーブルをはさんで向かい合う形で、隣は中年のアメリカ人夫婦、反対側は大学生と高校生のコロンビア人姉弟。
ワインやソフトドリンク、ビールなど飲み放題。サラダボウルにてんこ盛りのサラダが数種類。香ばしい肉の塊が次から次に運ばれて来る。
こんなに美味しいアサドは初めてだ。しかし黒い、血のソーセージは以前トライしてみたことはあるが、どうも苦手である。アメリカ人夫婦もこれはパスしていたが、コロンビア人姉弟は、私に「美味しいのに」」と言いながらムシャムシャ。
チョリソーに始まって、牛肉2種類(部位による)、豚肉、鶏肉と続くと、いくら美味しいと言っても食べきれない。
ところが、「ポキート(ほんの少し)」と言っても、出されるのは日本じゃ二人前の分量。
全くこんなに食べてたら太るのは当たり前だよね。アルゼンチン女性は若い人はほっそりとスタイル満点だが、中年女性がはちきれそうな腹部や大きな尻をしているのが多いのは当然の結果。
食事の最中にタンゴの踊りとフォルクローレ、ガウチョダンスが始まる。初めに司会者が各国の言葉で「こんにちわ」の意味の挨拶。そのたび毎に観客席から、自国の言葉での応酬が沸き起こる。
「こんにちは」と日本語が聞こえたので、夫が一人で数人分にも勝る大声で「こんにちは」と叫ぶと、あちこちから笑いが起きた。
ガウチョダンスは先端に丸い玉をくくりつけた綱(牛追いに使う道具の一種)をビュンビュン、猛烈な勢いで振り回しながら、足を踏み鳴らして踊る豪快な踊りだ。
踊りながらしきりにジョークを言って観客を笑わせているが、ほとんど聞き取れない。ただ一度、急に動きがスローになって、「カバジョ・ビエホ(おいぼれ馬)」と言ったのは分かって大笑いした。
隣のアメリカ人女性が私に、「何と言ったの?」と聞くから通訳してあげると大笑いしていた。いつもツアーガイドの英語のジョークもスペイン語のジョークも聞き取れず、悔しい思いを味わってる身には、ちょっぴり優越感を感じて良い気分だった。
そのうち観光客達も大勢フロアで踊り始めたが、大半が中年以上のカップルで、実に楽しそうに踊っている。夫に「踊ろうか?」と言うと「冗談じゃない」と言うご返事。
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食事のあとはホースショー見物。馬達が勢ぞろいして、足並みそろえ、オリンピックの馬術のような芸をする。その後は競技。高い所に綱がはってあり、その綱に取り付けたフックに、キーホルダーのわっか大のリングにリボンを結んだ物が引っ掛けてある。
ガウチョ達が次々、馬に乗って疾走して来て、手にした棒の先端をリングの中に通して綱から外し取るのだ。
成功すると観客が拍手喝采。ガウチョがその勝利のリングを手に観客席に近づき、女性に渡し、その女性の頬にベソ(キス)する。観客は又もや大喝采。私も一つもらってベソされた。
でも良いことばかりは続かない。見物中に足首を虫に刺され、真っ赤に腫れ上がってしまった。やれやれ。
帰りのバスはほとんど全員ぐっすりおねんね。ブエノスアイレス市内に入ると、めいめい都合の良い所で下ろしてもらった。
by ruriwada | 2007-06-13 01:47 | Comments(0)