ハッスルおばあちゃんのアルゼンチン日記


by ruriwada

瑠璃通信23

アルゼンチンには世界一と誇れる建造物がある。それはお墓。何だ、そんなばかばかしいことを、なんて言わないで。とにかく凄いなんてものじゃない。墓地と言うよりブエノスアイレス市街のミニチュアそのもの。
瑠璃通信23_f0135018_22465753.jpg

                   レコレタの墓地
150メートル四方の墓地内は市内と同じく区画ごとに真四角に区切られ、石造りの納骨堂が壁をくっつけて隙間なく建てられているのだが、墓と言うよりまるでアパート群だ。装飾つきの鉄柵の中に扉があり、扉には透かし窓があって、外から覗けるようになっている。
内側に小さな部屋があり、棺桶を一時乗せて置くらしい大きさと形の棚と花や飾り物を置く棚がある。部屋の片隅には地下室へ通じる階段がある。地下が納骨室になってるのだろう。
2階建て3階建ての墓や、屋根の上がローマの彫刻の様にゴテゴテ飾りつきの墓やら、ドームつきの教会みたいな墓もある。
夫が総大理石の豪華な墓を見て「これ一つで俺の家が買えるんじゃないかなあ。オレ達には墓を買う金もないと言うのに・・」とぼやく。まったく、墓もないはかない人生です・・ま、ぼちぼち考えときましょ・・なあんちゃって。いつもいつもオバンギャグばかり言ってすんません。
さて、ブエノスアイレスにはレコレタとチャカレタの二ヵ所の墓地があるが、どちらも墓地の形状は同じだ。レコレタのは市内のセントロにあり、一昔前の金持ち達の建てたらしい、豪壮だが古い墓が多い。
かの有名なエビータもここに眠っているが、彼女個人のではなく、いわゆる「××家の墓」で、墓誌に名前が書いてあるのだが、エビータの名前は一番下にある。墓地は迷うほど広いが、エビータの墓の前にはいつも観光客が群がっているのですぐ分かる。ご主人のペロン大統領の墓はここにはないそうだ。
瑠璃通信23_f0135018_22484315.jpg

                      エビータの墓
因みに夫が一人で初めてレコレタの墓地を訪れた時、地球の歩き方にある地図を頼りにエビータの墓を探したが、迷って30分もかかったと言う。二度目に私と訪れた時、夫は「オレも散々苦労したんだから、自分で探してみろ」と私に地図を渡した。
私が地図をさっと見て、「あ、左ね。あとは観光客が集まってる所を探せば良いのよ」と、歩き出して5分もかからず、人が大勢集まってる墓が見つかった。
「あ、あった、ここでしょう?」と夫に聞くと、夫はむっつり「違う」と言う。おかしいなあ、てっきりそうだと思ったけど・・とぶつぶつ言いながらしばらく探し回ってると、夫が急に「さっきの所だ」と言う。
「えっ?なんでうそ言ったの?」「オレが30分もかかったのに、5分で見つけたから面白くなかったからだ」
全く、いい年をして(67才)あきれたものだ。だいたい、お墓でウソをつくなんて、エンマさまに舌を抜かれたって知らないから。もっとも、ここはカトリックの墓地。カトリックではウソツキの罪は何だろうか?話がだいぶ脱線してすみません。ここで軌道修正。
子孫が絶えたのか、あるいは没落したのか、荒れ果てて廃屋(?)になっている墓もかなり見られる。墓地の周りは壊れかかった遺跡のような壁で囲まれており、その内側に沿って、無縁仏か貧乏人用か、カイコ棚のような墓が作りつけられているが、ほとんど使われていないようだ。
墓地に隣接して、1700年代初めに建てられた聖母ピラール聖堂がある。鐘楼が一つ高くそびえている。昔は、ラプラタ川を通る船の目印だったそうだ。
墓地のあるレコレタ地区は市内屈指の高級住宅街で、墓地の側には「ブエノスアイレスデザイン」と言う、高級ショッピングモールもある。ここのレストランのテラスからの眺めは素晴らしい。
チャカレタの方は広大だ。墓地と言うより、公園墓地と言うべきだろう。中を車で移動でき、教会もある。入り口周辺には十数件の花屋が軒を並べている。こちらは庶民の墓地だが、けっこう立派な墓が多く見られる。
瑠璃通信23_f0135018_22512018.jpg

                 チャカレタの墓地
瑠璃通信23_f0135018_22524926.jpg

                 チャカレタの墓地
ブエノスアイレス市内には墓の他にも、豪壮で度肝を抜かれるような立派な建物がいくつも見られる。アルゼンチンには大繁栄した時期があり、皆その時代の名残で、歴史を感じさせる建物だが現在でも使われている。
裏通りの小さな建物の中にも、その時代に建てられたらしく、彫刻が飾られ、往時はさぞ綺麗だったと思われるものが多くあるが、大半は古びて薄汚くなり、まるで廃屋のようだ。中には実際に半ば崩れかかっているのもあるが、それでも人が住んでる気配がある。地震王国の日本だったら、当の昔に跡形もなくなっているだろう。
私が通う語学学校の真正面にビルを建築中で、建築を始めた頃からずっと観察してるのだが、細い鉄筋だけで、ずいぶんいいかげんな建て方に見える。
瑠璃通信23_f0135018_22582581.jpg

                  建築始めの頃
最初は3階建てだと思っていたら、そのうち上に2階分上積みされ、しばらくしたら又その上に、という次第で、外側にレンガが張り巡らされた現在は9階建てだ。
瑠璃通信23_f0135018_2259592.jpg

       8ヵ月後のビルの側面
瑠璃通信23_f0135018_22593013.jpg

       8ヵ月後のビル
 ある日、語学学校のビルに入る前に、こんな建て方で地震がきたら大丈夫なのかなあ、と見上げていたら、作業中の男達が一斉に仕事の手を休めて手を振るので、あわてて中に
入った。クラスを終えて出てきたら、目ざとく見つけたらしく今度は口笛。
その日の私は帽子を目深に被っていたから、顔が見えず、きっと若い女の子と間違えたのだろう。夜目遠目傘の内と言うが、側に寄って来られて顔を見て、気絶でもされては大変だから、あわててその場を立ち去ったのだった。(本音はああ、面白かった)。
ブエノスアイレスは最近景気が上向きだとか。そのせいか、最近市内は建築ラッシュで、古い建物を次々壊して立て替えている。完成したビルはモダンで綺麗だが、古いどっしりとした建物が消えて行くのは寂しい。
残された豪壮な石造りの建物は墓地だけなんてことになったら、それこそはかない。
Commented by yoko at 2007-09-17 15:45 x
ブログみました、お元気でとても楽しそうね、お二人のお写真も素敵ですね fm Japan
Commented by ruriwada at 2007-09-20 00:09
有難うございます。写真の技術がまだまだなので、面白い写真をご紹介できるようがんばります。10月30日から一ヶ月、日本に一時帰国しますので、11月はブログの更新はお休みします。瑠璃通信
by ruriwada | 2007-09-04 23:02 | Comments(2)